歯が生え変わる時期、注意したい中心結節

投稿日 2022年8月8日
更新日 2022年8月11日
著者ひかり歯科医院
カテゴリー小児歯科診療
カテゴリー検診

【はじめに】
【中心結節とは】
【ツノが折れたら】
【ツノが折れないように】
【まとめ】
【さいごに】

【はじめに】
　歯が生え変わる時期、というと、いつの時期をイメージされるでしょうか？一般的には6歳前後で下の前歯が生え変わったり、下の前歯の裏から大人の歯が生えてきてびっくりしたり、下の奥歯のさらに奥の歯茎がモコッと盛り上がって大人の歯が出てくる痛みに驚いたり・・・歯の生え変わりの仕方はさまざまあります。6歳前後におとずれる生まれて初めての歯の生え変わりを過ぎるとしばらくは生え変わりは無くなりますが、そのあと、9歳前後くらいには奥歯の生え変わりの時期に突入します。
　こうした生え変わりの時期に気を付けていただきたいのが、大人の歯の構造に異常や不具合が無いかどうか、ということです。異常や不具合というと、ちょっと不安な言葉になりますが、一般的にはいくつかあります。その中でも中心結節や先天欠損、エナメル質形成不全というものがあります。ここでは、中心結節について解説していきます。

【中心結節とは】
　中心結節というのは主に小臼歯、つまり乳歯の奥歯である乳臼歯に代わって生えてくる大人の歯ですが、それに「ツノ」のようなものがその備えられている突起物のことを言います。ここでいう中心結節というのは専門用語ですので、そのイメージは難しいかもしれません。簡単に言えば、中心結節とは永久歯にある「ツノ」のような突起物のことを示しています。

　こちらを詳しく解説します。
　まず、歯には3層の構造があります。それが「エナメル質」「象牙質」「神経」と言われているものです。

　なぜこのようなツノが存在しているのかというと、歯が作られる時期に構造形態としてちょっと変わった形になってしまったから、ということが原因となります。つまり、”たまたまそういう形になってしまった”ということなのです。

　このようにできあがった形には特徴があります。それは、突起物にも神経が伸びて作られていることです。
　これが何を意味するかというと、細く伸びた神経が突起状になった構造と一体となって、形としては繋がっています。この突起物は細くて出っ張っているので、これに変な角度からの圧力がかかってしまうとポキッと折れてしまうことがあるのです。

　ポキッと折れるのは、たとえばプッチンプリンの底のにある空気を抜くためのプッチン（突起物）のようなイメージです。ちょっと分かりにくいでしょうか？
　もしこの中心結節が折れてしまったら、神経も一緒に折れてしまうことになります。すると、組織がむき出しになって、この折れたところから口の中の雑菌が侵入する、つまり感染してしまうです。

【ツノが折れたら】
　感染したら、歯の神経の部分は炎症を起こしてしまいます。炎症を起こした組織は、歯の場合はその神経線維を取り除かなければなりません。歯の神経は歯髄といって、一度感染してしまって炎症が起こった場合は元に戻らないのです。しかも、この中心結節は生えてきたばかりの歯で発見されることが多いため、まだ根の部分が完全に完成するまで作られていないこともあります。すると、未完成な歯に感染・炎症が起こり神経を取るとなると大変です。したがって、この時期の中心結節の発見はとても大切なことで、しっかりとした注意が必要なのです。

　とはいえ、中心結節自体ができてしまうことは不可抗力です。できてしまったものは仕方がないので、これが害にならないように未然に問題点となるところを防いだ方がいいということになります。

【ツノが折れないように】
　では、実際クリニックの現場ではどのような対策が行われているか、お勧めの方法のご紹介です。まず、一般的に中心結節が発見されたら、その周りをレジン（プラスチック）やセメントで補強します。これは倒れないように土のうを積むような作業です。ただし、この突起物がそこまでとがっていない、細くなっていないという状況であれば補強する必要はありません。その場合は、とがっている部分だけ研磨する程度になることもあります。
　ここで使うレジンやセメントとは、虫歯治療で使う詰め物の材料のことです。もちろん詰め物をする際に虫歯関連の雑菌を閉じ込めないようにする工夫は必要になります。したがって、クリーニング、機械的清掃、薬品による殺菌、接着剤、詰め物をする、という流れで行います。この流れは基本的にはシーラントという施術と同じ流れになりますので、可能であればラバーダムといって、施術する歯以外をカバーしてミニ手術室のような状態を作ってから行うのがベストです。