赤ちゃん(乳児~幼児期)の鼻づまりについて

【はじめに】

【鼻づまりとは】
【鼻が詰まって困ること】
【対策としてできること】
【まとめ】

【はじめに】
小児歯科に来院される方の中には、「鼻づまりがあって口呼吸している」という訴えを聞くことがあります。実際こういった問題に対しては小児科や耳鼻咽喉科で対応していただくのが妥当なこととはいえ、歯科での相談というのは口呼吸が良くないものという認識があるからでしょう。確かに口呼吸は免疫的にも体に悪影響がありますし、それ自体が不正咬合(歯並びを悪くするもの)の原因として考えられています。それが原因ではない場合においても、やはり歯並びに一定の影響を与えたり与えられた結果として口呼吸になっているという関係性を持つものです。そういった理由があるからこそ歯科で相談される方がいるのも事実だと考えています。
とはいえ、歯科医院での具体的な処置というのは難しいかもしれません。あくまで参考ということになりますが、ここで述べていくことが家庭でできることだったり、少なくともお口の環境にとっての一助になるものであればと思います。

【鼻づまりとは】
まず、一般的な鼻づまりは鼻の炎症、つまり「鼻炎」によって起こるものと考えられます。その鼻炎は、急性鼻炎と慢性鼻炎の大きく二つに分けられます。一般的な鼻炎といえばアレルギー性、ウイルス性(かぜ)の鼻炎によって粘膜が腫れてしまうものがあります。それ以外には慢性的に副鼻腔炎によって蓄膿症として膿がたまってしまうものもあります。
慢性であれ急性であれ、粘膜が腫れてしまうことに加えて鼻水や鼻汁が出て不快感があるのが特徴です。

【鼻が詰まって困ること】
歯科の立場から鼻づまりについて言えば、口呼吸によってもたらされる害は非常に多く考えられます。たとえば、口が乾燥して唾液の再石灰化力が働かないため、むし歯になりやすくなります。また、歯周病も同様に、乾燥による細菌の活性化により歯茎に炎症を起こしたり、場合によってはひどい口臭をもたらしたりします。ただ、子どもたちにとって鼻づまりが良くないのは発育に問題を起こす可能性が高いからなのです。(鼻づまりが骨格の成長に与える影響ついてはここでは省略。顎の発育説明会にご参加ください。)


そして、当然ですが、鼻が詰まってしまうと息苦しくなります。ただし、大人の感覚と子どもの感覚は少し違うかもしれません。鼻が詰まった状態が苦しいのは大人だとすぐ実感できると思いますが、子どもさんの場合はそもそも体が元気の塊でエネルギーがあふれているため、大人に比べるとそれほど本人は苦しさを感じない可能性があります。とはいえ、一般的に鼻が詰まって困ること=「呼吸がしにくくなって息苦しくなる」ということです。それは言葉を換えれば、呼吸効率が悪くなるということです。呼吸効率が悪いということは、身体に酸素をいきわたらせるのが非効率になるわけですから、成長期の子どもにとっては「成長」そのものに影響するということも考えられます。もちろん大人の場合も、非効率なシステムを無理に頑張らないといけないわけですから、例えば心臓に負担がかかってしまって心疾患のリスクが高くなるということもあります。実際、睡眠時無呼吸症にはこうしたリスクが挙げられています。


では、鼻で呼吸をする方がなぜ呼吸しやすいのか、口で呼吸するとなぜ息苦しいのか、それには空気の流れ方が違うという大きな理由があります。

<口呼吸と鼻呼吸で違う空気の流れ>
口呼吸の場合は口から肺にかけて広い空間を空気が移動するため、空気の流れが緩やかになります。一方、鼻呼吸の場合は、鼻の穴を抜けなければならないため、空気は細い空間を移動しなければならなくなります。したがって、当然ながらその流れは速くなります。たとえば、水道からホースで水を出すときにそのままジョボジョボ流しているものをイメージしていただきます。そのホースの出口をキュッと指で絞めたら勢いよく流れます。それは空気の場合も同じです。鼻の入り口は口よりも小さくて狭いものです。そのため、鼻から入った空気は喉の奥を通るときに勢いよく流れる早い気流となります。その結果として、肺の奥に到達した空気は、鼻から入ってきた方が口から入るよりも勢いよく、高い気圧で肺の隅々まで行きわたるのです。


こうして、口呼吸よりも鼻呼吸の方が呼吸効率はよくなるのです。だからこそ、鼻呼吸よりも口呼吸の場合は息苦しくなって困るのです。

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【対策としてできること】
まずは、アレルギー性鼻炎の場合、その原因対策になりますので耳鼻咽喉科や小児科でよく相談していただきます。今はアレルギー検査を行って原因に対する感作療法をするなど、治療を積極的に行うことが増えてきました。適切な対応をすることで早期に解決する可能性があります。


一方、慢性化した場合や粘膜肥厚がひどくなり、短期的な通院ではよくならない場合があります。そういった場合は、鼻粘膜が腫れてしまうことへの対策をお勧めします。
簡単にいえば、生活リズムへのアプローチです。言い換えれば、自律神経の働きを整えることということです。

<生活リズムを整える>
毎日の生活リズムの中には、お腹がすいた→食事、外で遊ぶ(日光にあたる)→メラトニン産生→夜よく眠れる、といった標準的なスタイルがよく挙げられます。


実はそれ以外にも季節の変動の中で考えるリズムがあります。たとえば、冬は寒い、夏は暑い、といったような、体表面で温度差を感じることです。また、朝は気温が低く寒い、日中は気温が上がって暖かい、そして夜はまた気温が下がって寒い、ということもあります。気温だけではなく、生活に必要な水は冷たい水に触れる時と、水に触れない時がある、ということも温度差を感じることになります。


こういった温度変化を感じることで発汗や末梢血管収縮などの体感コントロールは、脳幹部分で自律神経を調整することで行われます。そして、ここは同時に呼吸や嚥下(飲み込み)もコントロールするところです。緊張したら呼吸が早くなる、喉がカラカラになる、ひどくなったら冷や汗が出る、という経験があるかもしれません。
この自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があります。「交感神経」は緊張すると高まり、逆に「副交感神経」はリラックスすると高まります。このバランスがとても大切なことなのです。


実は、身体が温度差を感じることは、この交感神経と副交感神経のスイッチを切り替える役割があります。現代生活では、こういった体感刺激が少なくなっているからなのか、このスイッチの切り替えが行われる回数が少ないことで身体の制御が不安定になってしまっているのかもしれません。その切り替えは、いわば機械の油さしのようなもので、身体にとってはメンテナンスをしているようなことなのです。
鼻粘膜肥厚の部分で考えると、たとえば、身体が冷たい空気や水を感じることによって、交感神経が高ぶって体中の血管が収縮します。すると、粘膜もキュッと引き締まってくるので鼻の粘膜も腫れが無くなり鼻通りが良くなる、という仕組みです。

<鼻汁を吸引する>
あとは単純に鼻水や鼻くそが詰まってしまって鼻づまりがおこる場合が考えられます。鼻水は鼻吸い機を使ってもらうといいでしょう。この場合、電動の鼻吸い機がおススメです。一般的には、保護者の方が口にくわえて吸引するタイプの方が売れているのかもしれませんが、これでは鼻から出てきた部分しか吸引できません。この場合、ガーゼで拭ってあげるのとあまり変わらないでしょう。とはいえ、電動鼻吸い機は最低でも1万円以上するものなので、物入りの時期には高すぎる出費かもしれません。ここは自己判断していただければと思います。


電動鼻吸い機をおススメする理由は、それにサクションチューブ(「吸引カテーテル」で検索)が装着できるからなのです。サクションチューブは当然別売なのですが、規格として8fr(fr:チューブの直径)か、それより小さいくらいのものがちょうどいいです。これはアマゾンや楽天でも一般販売しているので購入できるはずです。このサクションチューブを先端に付け替えて装着すると、鼻に突っ込む形にはなりますが奥の方まで吸えるようになります。最初は怖いかもしれませんが、5~7cm程度なら突っ込んでも大丈夫です。最初は鼻の孔に1cmくらい入れて、そこから水平方向に向きを変えて挿入していきます。その際、少しチューブをくるくる回旋させながら挿入するとまんべんなく良く吸引できるはずです。

また、鼻くそが詰まってしまう場合は、先にセサミオイルやワセリンなどを付けた綿棒でチョコチョコこすってあげるといいでしょう。セサミオイルやワセリンは粘膜を傷つけないという意味もありますが、それ自体に保湿効果もあるので鼻くそが自然放出される時に役立ちます。ここで、鼻くそが奥の方に入ってしまうという不安もあるかもしれませんが、基本的に鼻の中から排出されようとする働きがありますので心配ありません。奥に突っ込んでしまった場合でもいずれ排出されます。大切なのは、鼻を詰まらせる原因として鼻の孔の先に空気の通り道を封鎖するように存在しているものを排除することです。

<やりすぎ注意>
ここまで、自律神経を整えるために冷温感覚刺激をすること、鼻汁を吸引すること、鼻くそをとること、を書きました。これらは、いずれも赤ちゃんたちはとても嫌がります。大切なことなのですが、やはり赤ちゃんにとっては不快なことに変わりありません。身体ケアをしているつもりが、やりすぎると傍目には虐待に映ってしまうこともありますので、あくまでもひとつの考え方としてとらえていただければ幸いです。無理やりしなければならないことでもありませんので、保護者の方が考える子育ての中で、自己責任の中で考え方を取り入れていただければと思います。

【まとめ】
鼻づまりは、原因がアレルギー性のものなのか、体調不良によるものか判断しておく
生活リズムの改善や、新しい生活リズムへの切り替えが必要なことがある
体調管理と生活リズム改善のバランスは自己責任で行う