バイオブロックって何ですか?RAMPAって何ですか?というお話

~「装置」ではなく「考え方」のお話~

当院のホームページや院内の掲示で「バイオブロック」という言葉を目にされて、「バイオブロックって、結局なんなんですか?」とご質問をいただくことがよくあります。インターネットで調べてみても、いろいろな装置の写真ばかりが出てきて、かえってよくわからなくなってしまった、という方も多いのではないでしょうか。

今回はこの「バイオブロック」について、いちばん大切なところをお話ししたいと思っております。先に結論からお伝えすると、バイオブロックというのは「装置の名前」ではなく、ひとつの「考え方」なんですね。ここがわかると、当院がやっていることがぐっと見えやすくなると思います。

【バイオブロックは「装置」ではなく「考え方」】

バイオブロックは、イギリスの矯正歯科医ジョン・ミュウ(John Mew)先生という方が考案された方法論です。お口の中に入れる装置そのものを指して「バイオブロック」と呼ぶのだ、と思っていらっしゃる方がとても多いのですが、本当はそうではないのです。というか、ちょっと違うはずです。

たしかに、治療では実際に装置を使います。けれども、装置はあくまでその考え方を実現するための「道具」にすぎないんですね。大切なのは道具のほうではなく、「何のために、どういう方向へお口を導こうとしているのか」という、考え方のほうなのです。ネットで調べてもわかりづらいのは、装置の写真ばかりが目に入ってしまって、肝心の考え方の部分が伝わりにくいからだと思っております。気になる方は、当院で実際の装置を手に取って見ていただくこともできますので、いつでもおっしゃってくださいね。

【では、何を目指す考え方なのか ― 「あごを前に出す」】

では、バイオブロックは何を目指す考え方なのでしょうか。ひとことで言えば、「あごを前に出す」、つまり前方への成長をうながしてあげる、ということです。より正確に言うと、上あごを前に出して、下あごをそこについていかせる。これが当院の治療の大原則になっています。

一般的によく知られている矯正治療は、すでに生えている歯を、ワイヤーなどを使ってきれいに並べていくものです。これはこれで、とても素晴らしい治療だと思います。けれども当院が大切にしているのは、歯そのものよりも、その歯が並ぶ「土台」、つまり骨格のほうなんですね。

体があって、その一部としてお口があり、歯があります。ですから、まず体(骨格)の成長があって、その結果として歯並びがついてくる、という順番で私は考えています。歯並びが乱れているとき、その奥には「あごの発育が足りていない」という原因が隠れていることが多いのです。だったら、歯を並べる前に、まずあごをしっかり前に育ててあげよう。これが、バイオブロックという考え方の根っこにある発想なのです。

あごを前にしっかり育ててあげると、歯並びが整うだけではありません。空気の通り道、いわゆる気道が広がって、呼吸がしやすくなることにもつながっていきます。当院が見ているのは、歯並びという見た目だけではなく、その子が一生使っていく体の働きそのものなのです。

そして、あごの発育には「時期」があります。乳幼児期から学齢期にかけてのこの時期にしか、あごは大きく育ってくれません。大人になってからでは、もう骨格そのものを成長させることはできないのです。だからこそ、子どものうちに土台を育てるという考え方を、私は大切にしております。

【装置は「その都度、設計して使うもの」】

ここが、今回いちばんお伝えしたいところです。バイオブロックには、ステージ1、ステージ2……といった、段階を示す名前があります。けれども、これは「1番から順番に使っていく」というものではありません。

お子さま一人ひとり、お口の状態も、あごの育ち方も、年齢も、生え変わりの時期も、まったく違います。ですから、その子の今の状態をきちんと診断したうえで、「この時期の、この子には、こういう装置を、こういう形で」と、私のほうでそのつどオーダーメイドで設計していきます。順番ありきでも、装置ありきでもないのです。

つまり、当院の治療はすべて「診断」が出発点です。レントゲンを撮り、お口や全身の状態を診て、はじめてその子に合った設計が決まります。これはあくまで医療行為ですので、すべて診断のもとで行われるものなのです。「バイオブロックという決まった装置を、決まった手順で当てはめていく」のではなく、「あごを前に育てるという考え方を、その子に合わせて形にしていく」。同じ名前の治療でも、中身は一人ひとり違っているわけなんですね。

ですから、保護者の方にいちばんお願いしたいのは、「どの装置を使うか」を心配されるよりも、「なぜあごを前に育てるのか」という考え方のほうに、まず納得していただくことなのです。考え方さえ共有できていれば、途中で装置の形が変わっても、迷わずに一緒に進んでいくことができます。

【だから「バイオブロックでなくてもいい」】

少し意外に思われるかもしれませんが、目的である「あごを前に出す」ことさえ達成できるのであれば、極端に言えば、使う道具はバイオブロックでなくてもかまわない、と私は思っております。あくまで考え方が主役で、装置は脇役だからです。

そもそもバイオブロックは、もともと欧米の方を対象に考えられた方法です。骨格が前に出やすい欧米の方にはとても効果的なのですが、平たい顔立ちで、あごを前に出しにくい日本人に、そのまま100パーセント当てはまるわけではありません。だからこそ私は、バイオブロックを「決まった手順」としてではなく、「考え方」として受け止め、その子の骨格や成長に合わせて形を変えながら使っていく必要があると考えているのです。

実際、日本人のお子さまの場合、お口の中の装置だけでは、骨格の成長力をどうしても賄いきれない部分が出てくることがあります。そういうときに当院で組み合わせるのが「ランパ(RAMPA)セラピー」です。これは、ヘッドギアのような装置を使って、上あごをより大きな力で前へ引っ張り、けん引していく方法で、お口の中の装置だけでは届かないところまで骨格を動かすことができます。お子さまによっては、このランパがどうしても必要になる場合があるのです(ランパの詳しい内容は、また別の記事でお話しします)。

逆に、ランパを全く使わずに済むお子さまもいます。なかには、一般的なワイヤーを使った矯正で十分に対応できるお子さまや、そもそもバイオブロックのような骨格の治療までは必要のないお子さまもいらっしゃいます。その一方で、バイオブロックだけでは思うように治りきらず、ランパを2回、3回と組み合わせていかないと前に進まないお子さまもいます。

このように、何が必要で、何が必要でないかは、本当に一人ひとり違います。そしてそれを決めるのは、装置の名前でも、決まった手順でもなく、あくまで「診断」なのです。レントゲンや全身の状態をきちんと診たうえで、その子にいちばん合った道筋を選んでいく。バイオブロックという考え方は、その選択肢の真ん中にある大切な土台、と受け止めていただけたらと思います。

【まとめ】

あらためてになりますが、バイオブロックは装置の名前ではなく、「あごを前に育てる」という、ひとつの考え方です。装置はその考え方を実現するための道具であって、お子さま一人ひとりに合わせて、診断のうえでそのつど設計していくものなんですね。

ただ、こうした考え方は、文章だけではどうしても伝えきれない部分があります。当院では月に一度「顎の発育説明会」を開いて、実際の装置を手に取っていただきながら、こうしたお話をじっくりとさせていただいています。「うちの子の場合はどうなんだろう」と気になられた方は、どうぞお気軽にご相談ください。お子さまの一生の土台づくりを、一緒に考えていけたらと思っております。

なお、ここまでお話ししてきた内容は、あくまで当院の、そして私個人の考え方です。バイオブロックを考案されたイギリスのジョン・ミュウ先生や、ランパを開発された恩師の三谷寧先生から、お食事をご一緒しながら、あるいはそばで学ばせていただく中で教わったことを、私なりに受け止めてきたものです。ですから、ほかの先生方が同じように考えておられるかどうかは、私にはわかりません。そのことも、どうかご承知おきください。

ご質問やご相談は、ひかり歯科医院のLINE公式アカウント、お電話(0297-44-5800)、メール(hikaridentalclinic@gmail.com)にて、お気軽にお寄せください。

医療法人 ひかり歯科医院 院長 益子 正範

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