【はじめに】
【矯正治療の目的 その①】
【矯正治療の目的 その②】
【まとめ】
【はじめに】
一般的に「矯正治療」というと、”大人の歯が生えそろってから始めるもの”という認識をお持ちの方がいます。そうした中で、当院では子どもさんの歯の生え変わりの見られる頃に、ご家族の方から「矯正をするとしたらいつぐらいがいいのか?」というご質問を受けることがあります。ここで、もし一般的に知られるように、「矯正治療=歯が生え変わってから」と思い、中学、高校生くらいになってから相談をされると、それでは少し取り組み始めるには遅いかもしれない、と説明しなければならないことになります。もちろん程度によるものではありますので、必ずしも大人の歯が生えそろってから始めることが遅いわけではありません。
ただ、矯正治療のタイミングはいつか?ということを踏まえて、治療への考え方をしっかり整理し、ご家族でどのように理解しているかその解釈を統一したうえで子どもさんに対峙してあげる、あるいは、その方向付けだけはしておいた方がいいと思い、こちらのブログで解説させていただきます。
まず、矯正治療の目的は、大きく2つの考え方があります。
【矯正治療の目的 その①】
1つは、歯の並びを整えること。これは大人になってから矯正治療に取り組む場合の治療として多く知られています。これが一般的に昔から考えられている考え方に近いものですね。また、この場合は見た目を整えることだけではなく、虫歯や歯周病になりにくくすること、という認識もあるようです。
むし歯になりやすいかどうかは、本質的には”歯の並び”とは別問題になります。とはいえ、歯の磨きやすさ、という点で考えた場合は、虫歯や歯周病への予防的影響はあり得るはずです。歯磨きによりむし歯が減少するというデータはありませんが、フロスをしたかどうか、ではフロスをした方が虫歯になりにくかったというデータはあります。また、フッ化物(フッ素)を使った方がより予防効果が高いというデータもあり、これが最も信頼性が高い情報です。このあたりの詳細はまた別の機会に解説することにします。
【矯正治療の目的 その②】
もう1つは、顎の発育を整えること。これは大人になってからでは出来ません。そのため、骨の成長が未成熟である時期、つまり7〜8歳くらいまでに取り組み始める必要がある、という考え方です。また、これによりお口の中のバランスが整うことで、呼吸がしやすくなったり姿勢の維持に良い影響を与えることも可能性としてあり得ると考えられます。
当院の矯正治療は「顎顔面口腔育成治療」ということで、特にこの②の方に相当します。
その目標としては、主に呼吸や姿勢、骨格の発育に重点を置いているため、歯並びはその一つの副産物としてある程度並ばせることとしています。ということは、この顎顔面口腔育成治療においては、骨格を発育させることを治療プロセスの中で大切にしているので、だいたい8歳くらいまでに治療するかどうかの検討をしていただきたいと考えています。もちろん9歳、10歳でも実年齢と歯牙・骨格年齢は違う場合がありますので、一概に9歳だから遅いということではありません。
とはいえ、ヒトの顔面骨の特徴として、2歳くらいで顔を構成する骨格の成長方向が決まる!と言われています。そして、6〜8歳くらいの時期に8割の骨格の構成が決まる!とされ、9〜10歳くらいではほぼ大人と同じバランスになると言われています。であれば、2歳くらいで”ある程度”は、治療対象とするかどうかは決められる、ということも言えます。
はじめにお伝えしましたが、一般的には歯が生えそろってから、という考え方のもとでは、歯が生えそろってからでなければ治療するかどうか分からない、といわれることがあります。しかし、確かにそうはいっても、時代とともに考え方はアップデートされるものです。一昔前、教科書には確かにそのように載っていました。教科書通りという意味では、この考え方ではある意味正しいことです。しかしながら、それが現在の考え方でも合っているかと言われれば、少しずつ変わってきていると言わざるを得ません。
【まとめ】
矯正治療はいつから始めた方がいいのか?という質問に対しては、個人差があるためすべての人に同じように言えるわけではありませんが、骨格から治療をする「顎顔面口腔育成治療」や「小児矯正」と、「一般歯列矯正」は別物と考えていただいたうえで、
①歯列を整えることを目的としてある程度年齢が達してから検討するか
②骨格から考えて低年齢のうちになるべく早くに検討するか
の2パターンになります。
お伝えしきれない部分もありますので、詳しくは受診時に院内スタッフまでおたずねください。