子どもが寝ている時、気になる歯ぎしり大丈夫?

【はじめに】
【歯ぎしりとは】
【歯ぎしりの仕組み(諸説あり)】
【歯ぎしりで困ること】
【対策としてできること】
【まとめ】

【はじめに】
診療でよく食いしばりについて聞かれることがあります。それは大人の場合によくあることだけではなく、子どもでも相談があります。

大人の場合では、歯ぎしりや食いしばりによって、歯が凍(し)みることがあったり(参照:歯が凍(し)みる!知覚過敏?その歯の根元、エグれてませんか?)、治療した修復物が破損して欠けたり割れたり、場合によっては歯そのものが割れてしまったりすることが報告されています。また、それは寝ている時だけの問題ではなく、最近では日中無意識に食いしばってしまいさまざまな問題が引き起こされるケースが増えているという報告もあります。

一方、子どもの場合では実質的なトラブルは非常に少ないです。実際いくつかある相談としては、赤ちゃんでも歯が生えてきたころに歯をこすり合わせる「ギリギリ」という音が気になるということがあるようです。また、幼児期(1歳~5歳)や学童期(6歳~12歳ごろ)では、大人と同じかそれ以上に非常に大きな音を立てて歯ぎしりをしている様子が心配という声もあります。

【歯ぎしりとは】
一般的な歯ぎしりとは、「ギリギリ」という音を出すものとして認識されていることが多いようです。分かりやすくすると、以下のような3つに分類されるものがあります。

①グラインディング・・・ギリギリ横にスライドさせるように顎を動かして歯をこすり合わせるものです。同時にギチギチとした音を出します。

②クレンチング・・・歯をぎゅっとかみ合わせて力を込めたまま動かない様子のものです。動きが無いので、当然ながら音は出ません。就寝から起きた時に顎の筋肉が疲れていることがあります。

③タッピング・・・歯をカチカチとリズミカルに噛み続けることです。カチカチした音が出ます。

【歯ぎしりの仕組み(諸説あり)】
結論から言えば、歯ぎしりの仕組みは厳密に解明されているわけではありません。今でも研究段階の理屈なので、ここで説明している内容は現時点でもっともらしいことのみお伝えすることになります。

<脳機能として無自覚的に伝達(信号伝達)されることによるもの>
まず、人の体の機能として考えれば、歯ぎしりは脳からの信号伝達によって発生していると考えられています。脳からは常に信号が送られていることはよく知られていると思います。人間はモグモグしたりアグアグしたり、顎を動かす筋肉がその影響を受け続けているものです。例えば、今ではあまり見かけることはありませんが、かつてはお年寄りで歯が抜けたまま放置している方もいました。そのような方の場合はこうした脳からの動き信号が送られているため、いつもモグモグと顎を動かして何かを食べているような様子をみて不思議に思った方もいるかもしれません。これが脳機能として伝達される仕組みから考えられるものです。

そして、それはREM睡眠とNonREM睡眠の移行期に起こりやすいという報告もあります。REM睡眠とはRapid Eye Movement、つまり寝ている間も目がキョロキョロ動いている状態の睡眠を示します。一方、NonREM睡眠はその逆に寝ている間の目の動きは見られない状態の睡眠を示します。睡眠中はこの状況を繰り返し起こしているので、どうしてもそのタイミングで起こるものだとしたら、自然発生的に歯ぎしりや食いしばりは起こしてしまうものだということになります。

また、こういった信号伝達による刺激は寝ている間に続いているわけですから、当然ながら寝ている時には「無自覚」で歯ぎしりや食いしばりが起こってしまうことになります。これは日中生活の中で与えられたさまざまな刺激に対して、寝ている間に情報の整理整頓をしているためと考えられています。例えるなら、夜間の交通整理・道路工事をしているようなイメージです。

現代において一日に受ける情報刺激(知的ストレス)は、弥生時代のころのそれよりも膨大な量であることが報告されています。その差は、弥生人が一生の間に受ける情報量を現代人は一日ほどの短期間で受け止めなければならない可能性も示唆されているほどです。当然、寝ている間の整理整頓ということでは日中の情報刺激(知的ストレス)が大きければ大きいほど整理整頓が大変になるということも分かります。

さらに、これら以外の説では遺伝によるものも考えられています。遺伝的なこともまだまだ分からないことだらけなので確定的なことは言えませんので、ここでは可能性として示唆するまでに留めておきます。

【歯ぎしりで困ること】
<子どもの歯ぎしりはほとんどの場合は問題ない>
結論から言えば、特別な場合を除いて歯ぎしりで困ることは「ほぼ無い」と思っていただいて大丈夫です。気になるという方は仕方ありません。たとえば大人の場合では、パートナーの方について「鼻息が荒いのが気になる」、「あくびをするときに声を出すのが気になる」、「くしゃみの時の声が大きい(変?)なのが気になる」、という方はいたとしても、耳鼻咽喉科に相談に行くということまでは至らないと思います。生理現象としてとらえてみると、それも問題ないとして認識していただけるのではないでしょうか。
ただし、実際に歯ぎしりが激しすぎて歯がすり減ってしまってきた、という場合は問題として認識する必要があります。こういった場合は実に稀(まれ)にしか起こらないことなので、一度歯医者さんで問題ないと言われる程度であれば気にしなくても大丈夫です。では、この稀な場合というのはどういう場合かというと、歯がすり減ってしまって歯の神経がむき出しになるくらいまですり減ってしまっている場合です。

<時期別に考えた場合>
幼児期になる前、赤ちゃん(~1歳半くらい)の場合は、初めて生えてきた乳歯というだけでも気になってベロで舐めたり指で触ったりするものです。ちょうど生後5~6か月ごろに下の前歯が生えてきます。それまでに自分自身の手を認識できるようになったり(ハンドリガード)、身の回りの手に届くものをつかんで口に持って行ったり、といった赤ちゃんの発達段階では自然な様子が見られるものと思います。そこに自分自信の身体の変化として歯が生えてくるというイベントが発生します。そして、10か月くらいになると上下の前歯が生えてくるので、カチカチ噛み合わせることもできるようになり、ギリギリこすらせて音も出せるようになります。


一般的には赤ちゃんが大人のような歯ぎしりをするというイメージがないためか、それ自体に不安に感じてしまうこともあるようです。ただし、それはなぜそうなるのか分からないから不安になるだけですので、「人生初のイベントだから気になって歯を擦らせて音をだしているだけ」と思ったら、意外となんてこと無いものではないでしょうか?
一方、幼児期や学童期にかけての場合は大人と同じものです。1歳~2歳くらいでしたら、単純に先の赤ちゃんのところでお伝えしたような考え方、つまり「気になるから」歯ぎしりや食いしばりをするという認識でいいと思います。これが3歳を超えてくると、同じように歯ぎしり食いしばりをするといっても、「虫歯によって治療した歯がある場合」ということも考えなければなりません。これは、治療をすることでプラスチックの材質で充填するなどもともとの歯に修復物が補填されている状態になります。ということは、人工物であるために標準的な形の自然な歯よりもその部分だけ欠けやすかったり外れやすかったりするということを覚えておかなければなりません。もちろん、治療はしないに越したことはないのですが、この点において治療をした経緯のある場合というのはトラブルのリスクは少しだけ高くなるということを知っておいた方がいいでしょう。

【対策としてできること】

まずは赤ちゃんにとって歯ぎしりは「一番身近なおもちゃの替わり」になっているので、そのまま好きにさせてあげるのがいいと思います。
年齢が進んで、虫歯治療の経験の無い子どもさんの場合も特に心配することはありません。もし寝ている時に歯ぎしりをするようであれば「交通整理中」くらいに思っていて大丈夫です。一方、日中に歯ぎしりをしているような場合は「癖」になっている可能性もありますので、一言「ギリギリするのやめなさい」とだけ注意してあげるようにしてみてください。
また、虫歯治療の経験のある子どもさんの場合は、詰め物が外れてしまったり、歯が欠けてしまったり、といったトラブルにつながる可能性があります。一度歯医者さんで相談されていれば、その後は定期的に検診などでチェックしていただけるはずです。また、それと同時に家庭での仕上げ磨きやたまに保護者のチェックを行った時にでも気になるような欠けている歯が無いかどうか確認する程度で大丈夫です。

それでもどうしても歯がすり減っているのが気になって仕方がない、という場合は大人と同じような歯ぎしり用マウスピースを作るという方法もあります。大人の場合は周期的に作ってしばらく継続使用できるものなのですが、子どもさんの場合は「成長」というライフイベントが続いています。したがって、ずっと同じマウスピースを使っていると顎の成長を抑制する可能性もあります。そのため、定期的に作り直しをするか、一時的に使うだけにして気にならなくなったら使うのはそれまでにする、といった対応でもよいでしょう。というのは、歯ぎしり自体ずっと続いているものではなく、それも周期があり一年のうち春や秋など生活環境の変化が多い時期に気になってくることが多いようです。そのため、その時期を過ぎれば生活リズムも安定して気にならないようになっていきます。それまでの一時使用という認識で検討していただければと思います。

【まとめ】
赤ちゃんの歯ぎしりは気にしなくても大丈夫
子どもの歯ぎしりは虫歯治療の経験があるかないかで対応を検討する程度で良い
歯がすり減り過ぎるくらいの過度な歯ぎしりはごくごく稀(まれ)