大人の歯が生えてこない?突然歯が痛いという園児たち

【はじめに】
【大人の歯が生えてこない?生え変わりが遅いの?】
【突然、歯が痛いという園児・・・虫歯ではなさそうなのに】
【まとめ】

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【はじめに】
 生まれて初めて歯が生えてくるのは生後数ヶ月経ってから…人によっては 1歳を超えて生えてくることもあります。平均的な生え方、生える順番でなければ何かと不安に思うかもしれません。その後、2〜3歳(または4歳)くらいにかけて乳歯がすべて生えそろいます。乳歯は上下左右全部で20本です。生えてくる順番やその時期は人によっては個人差が大きく、まわりのお友だちが生えているからといって我が子が遅い、と気にすることはありません。たまに先天欠損(先天的、つまり生まれながらに歯が作られない)と言って、生まれつき生えてこない歯があることもあります。もしそのようなことが気になれば、まずは気軽に相談してください。

【大人の歯が生えてこない?生え変わりが遅いの?】
 5歳くらいになると、まわりで生え変わりが始まっているお友だちも何人か出てくることと思います。そんな時こそ、保護者の方からはよく「うちの子は生え変わりが遅いのか?」という質問を受けます。結論としては、まったく気にしなくても良い、決して遅いということはありません、と言うことになります。また、同じようなことですが、「6歳になるうちの子の前歯が抜けたけど、そのあとなかなか大人の歯が生えてこないが大丈夫でしょうか?」、「7歳になってもまわりのお友だちは大人の歯が生えてきているみたいだけど、うちの子はまだなのでしょうか?」といったことも生え変わりという意味では同じです。ほとんどの場合は、顎の骨の中に大人の歯は存在しています。まれに、やはり先天欠損により大人の歯が認められなかったり、骨格の歪みが大きく生えてくる場所が足りないことで生えてくるのが遅いこともあります。
 そもそも、生え変わりの時期は人によって実にさまざまなのです。例えば、4歳のうちに早々に大人の歯への生え変わりが始まる子もいれば、8歳を過ぎて初めて大人の歯が生えてくる子もいるのです。それくらい生え変わりの始まりというのは年齢の幅が広いものなのです。
 もし、生え変わりが先天欠損や歯の本数になんらかの問題があるのではないか?ということで不安が感じられるようであれば、一度レントゲンでの検査をされてみても良いかも思います。当院では6歳を機に歯の本数の他に、顎の中にある大人の歯の状態を確認したり、目視で確認できないような虫歯やその他異常を確認するためのレントゲン検査をお勧めしています。そこで、大人の歯が生えてこないのはどの程度の個人差によるものなのか、それが骨格の発育によるものと考えられるのか、そもそも先天欠損なのか、というのもレントゲン検査で確認でき、全体像が分かるのです。

【突然、歯が痛いという園児・・・虫歯ではなさそうなのに】
 4歳、5歳、6歳くらいの年齢になると、突然(思いっきり痛がる様子はないのですが)歯が痛い…ということがあります。とはいうけど、何ともない?と何やら不安だけ感じてしまうような現象が起こることがあります。
 歯の生え変わり時期に際して、歯が生えてこない件とは別になりますが、ちょうどこの頃には何も問題がないにも関わらずこのように「なんか歯が痛い」と親に訴える子がいます。これは生え変わりの時期、つまり4歳から6歳くらいに多く見られます。
 これらの場合、実際の歯科医院に来られる主訴としては、「子どもが歯が痛いと行っているので診てほしい」ということになります。しかし、いざ診てみると本当に虫歯でもなく、歯茎が腫れているわけでもない。まして、生え変わりの時期ですので歯がグラグラ動いているのかと思いきや、生え変わる様子も見られない。でも本人は痛いと言っている、という不思議な現象が起こります。
 そんな時、よく子どもさんから話を聞いてみると、痛いとは言っても虫歯のように激しい痛みがあるわけでもないものです。こちらから「痛いの?」と聞けば「うん」と答える程度です。
 この不思議な現象の真実は、必ずというわけではありませんが、この時期特有の子どもの反応の一つがあるものだと考えられます。それは何かというと、大きく2つあります。

 1つは、何か物がはさまったり、実際にぶつけたか何かで強い衝撃が歯に加えられたり、物理的に違和感を引き起こす何かがあった場合です。そんな時、子どもたちは具体的に細かい状況説明をするほどにボキャブラリーが発達している子は少ないものです。ではどのように説明するかと言うと、

「なんか物がはさまっていて違和感がある、昨日からちょっと歯が動くような気がする、触ると痛いほどではないけど変な感じ」=「(ざっくりと)なんか痛い」

ということになります。つまり、細かい説明ができないので、結論としては「なんか痛い」という一言に集約してしまうのです。

 もう 1つは、ちょうどこの年齢においては異年齢保育といって、1つか2つくらい年長のお友達と一緒にいることがあります。その年長のお兄ちゃん、お姉ちゃんたちは歯が生え変わる時期にあり、子どもたちにとっては歯が生え変わり大人の歯になることはとても誇らしく感じられるイベントの一つです。そんなキラキラした憧れる生え変わりを目の当たりにした子どもは、頭の中で「自分も早く歯が生え変われたらいいのに」というイメージを抱くことがあります。その心の声は、体への具体的願望として保護者に対して「なんか歯が痛い=グラグラしている」と自分で解釈して発言することになるのです。つまり、早く大人になりたい願望===歯が痛い、ということなのです。
 大人からしてみれば、なんだそんなことか…みたいな話ですが、人生5.6年の彼らにとっては自分の体に起こる変化を伝えるというのはとても大変なことです。どうか、歯科医院で確認してもらった時も「そんなことで歯医者さん来させないで!」なんて言わず、「大丈夫みたい。でも、もうすぐ大人の歯に生え変わるから楽しみだね」というような、子どもの心の発達を優しく見守ってあげるような対応を願っています。

【まとめ】
歯の生え変わりは人によって違うため4歳で生え変わりが始まることもあれば9歳くらいでようやく生え変わることもある
必要に応じてレントゲンで確認することも可能
まわりのお友達に影響されて、お口の変化を(願望も含めて)何らかの形で保護者に訴えることがある