レントゲンを撮影する理由

【はじめに】
 歯科医院で撮影するレントゲンには、小さいサイズのもの(部分的に撮影するもの)と、大きいサイズのもの(全体的に撮影するもの)があります。ひかり歯科医院(以下、当院)では、これらレントゲン撮影業務に対しては法に則り専門の診療放射線技師に担当していただいております。
 ここでは、そのレントゲンについての必要性と役割について当院での解釈を解説していきます。

小さいサイズのデンタルレントゲン写真(単純撮影)
WhiteCrossホームページより引用
大きいサイズのパノラマレントゲン写真(単純撮影)

【レントゲン撮影は歯科診察では必要不可欠】
 かつて歯科医院ではレントゲン撮影をせずに治療にとりかかる時代もありました。70年代、80年代で歯科治療を受けられた方の中には、ちょっと見てもらったらすぐに削り始めて治療された、ショックでした!、という方もいるかもしれません。もちろん今の時代でそのように治療をされる医院はほぼ無いと思いますが…
 院長である私も、小学生のころ乳歯の治療ですぐに抜かれてしまったことを覚えています。そのころ(30年以上前)は、レントゲンでの確定診断もなければ、処置前の保護者への説明もない時代でした。確かに子供は「砂利(じゃり)」と呼ばれ、とてもたくさんの子どもがいた時代ですから、いちいち確認していたら患者にいくら時間をかけても仕方ない状況だったかもしれません。
 でも今は時代が違います。疾患に対して、きちんと診断をつけるためには根拠となるものが必要です。それが検査結果としてのレントゲン写真なのです。
 この確定診断のために、レントゲンは歯科診断のためには絶対必要不可欠なものなのです。

【歯科で行う口腔内診査とその検査】
 そもそも、歯科で行う診査には、口腔内写真による診査、歯周ポケットプロービング検査による診査、エックス線レントゲン撮影による診査、の大きく3つがあります。

 口腔内写真は、お口の写真を撮影して、文字情報ではなく視覚情報として記録しておくものです。虫歯や歯周病の進行具合のほかに、粘膜疾患(感染症や癌など)の発見にも役立っています。かつてはあまり撮影する医院はなかったかもしれませんが、今は予防歯科の実践のためには必要不可欠な検査となっています。

 歯周ポケットプロービング検査は、歯周病の状態を診査記録するもので、歯と歯茎の境目の炎症状態を調べるために行います。検査の実施にはチクチクする感覚が苦手な方もいるかもしれません。しかし、内科で言う触診、打診のようなもので、的確に概要を把握するためには必要な検査となります。

 そして、エックス線レントゲン撮影は、表面的に目に見えないところを透過して確認するものになります。
 例えば、内科に受診したときに問診、触診、エコーなどにより診査を行いますが、それらでおおよその概要を把握することと思います。そして、さらにはそれらとともに採血で身体状態の目に見えない部分を調べることがあります。内科の場合は主に消化器官や内分泌器官など、軟組織とよばれる組織を対象に診察することと思います。一方、歯科は硬組織を扱います。内科のように目に見えない隠れた部分の診査としてエコーや採血に相当する診査が、レントゲン診査になるのです。

【レントゲン検査の必要性】
 したがって、歯科でレントゲン撮影を行わないで診察を受けるのは、内科で問診と触診だけで診断する状況に相当します。つまり、それは内科診察、内科検診ではなく、内科相談、健康相談の域でしかありません。歯科で言えば、歯科相談と言えます。診察のためには検査が必要です。その先の処置を行なったり処方薬を出したりするためには、診察は避けられないものなのです。

 こういった検査のないまま診察を行うのは、医療者側としてはライトのないまま暗闇を歩いて探し物をしているかのような錯覚に陥ります。

 中にはレントゲン検査を放射線被曝の面からなるべく避けたいという方もいらっしゃると思います。まずは、歯科で扱うレントゲンは現在ほぼ全てデジタルになっており、被ばく線量も日光浴で浴びる生活線量と同じくらいと言われています。歯科用CTの場合でも、飛行機で海外旅行した時に受ける自然線量と同程度と計測されています。そのため、現実的には心配しなくても大丈夫、ということになります。とはいえ、気持ち的にやはりどうにも気になる、と言う方もいらっしゃるかと思います。その場合は無理に撮影されなくても大丈夫です。もちろん確定診断は出来ませんが、可能な範囲で診察を行い、わかる範囲内で治療相談をさせていただくことになります。

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以下、参考までに撮影されたレントゲンから、何が見て取れるのかを提示しておきます。

顎の関節 鼻腔の炎症 骨密度 親知らずと神経の位置関係

詰め物の有無(金属、プラスチック、セラミック、インプラント、根の中、など) 感染病巣(根尖病巣) 虫歯の存在 詰め物の適合 歯の本数 

歯茎の骨の状態(歯周病の状態)  歯石の状態

歯の生え替わりの状態 大人の歯の向き 異常な生え方の確認 過去の治療の確認 先天欠損の確認 過剰歯の確認

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【まとめ】
歯科医院でのレントゲン検査は必要不可欠、内科でいう採血の検査と同じように、見えない疾患の可視化を行う
デジタルレントゲンの被曝量は自然線量と同程度である
とはいえ本人の希望により撮影するメリットとデメリットのバランスで判断する