【学校検診】 要注意乳歯って?何が要注意?指摘されたそのワケは? 

<もくじ>
・はじめに
・学校歯科検診で発覚する「虐待」
・ちょっと気になる「要注意乳歯」
・気を付けるべきポイント
・さいごに
・まとめ

【はじめに】
 毎年、春になると学校歯科検診や幼稚園、保育園の歯科検診が行われます。地域によっては秋にもあるところがあるかと思います。そこで、検診で指摘された箇所に問題があった場合、報告の「紙」をもらってくることでしょう。

<学校検診の報告は「ふるい分け」だけしている=ちらっとチェックするだけ>

 その紙には、「虫歯あり」や「歯肉炎」などについて指摘があり、学校からすれば「放っておいたらよくないよ」、というメッセージを伝えなければならないものです。つまり簡単に言えば「歯医者さんに行って詳しく見てもらってください」という催促をお願いする、ということになります。

 よく、「検診で引っかからなかったから虫歯がないと思っていました」というお声を聴くことがあります。これは学校歯科を担っているわたしたちの説明不足であり、その責任も感じるところです。学校や保育園、幼稚園で行う検診には、歯医者さんで使う無影灯、つまり明るいライトがない状態でのチェックでしかできない状況なのです。たとえば、警備員さんがまっくらな倉庫の中で懐中電灯だけを照らして何か異常がないか、だれか不審な侵入者がいないか、確認するとなると、一応は大丈夫だと思っていても、物陰にひっそり隠れた誰かを見つけることはできないことがあります。もちろん、そこで、明かりをつけて隈なくゴソゴソと探りを入れれば見つけることもできるかもしれません。しかし学校検診ではそんな時間も、そんな明るさも無いのです。それで100%信頼してもらおうと思ってもちょっと難しいな、ということで、いったん怪しいところがある場合は、先のメッセージを込めて一度歯医者さんに行ってしっかり診てもらってくださいね、ということにしているのです。ということで、もちろんそこに見落としも少なからず出てしまうこともあるわけです。

【学校歯科検診で発覚する「虐待」】

 学校検診でチェックする項目は、顎関節、噛み合わせ、歯肉の状態、歯垢の付着、歯の本数、歯の状態(虫歯、処置済歯)、その他、となっています。要注意乳歯の指摘については、それらの中のひとつにすぎませんが、具体性がない表現であるためにみなさんが不安になってしまうのは仕方ありません。

 したがって、実際のところは歯科医院で検診を受けていただいた方がいいのは間違いありません。繰り返しますが、学校検診の目的はスクリーニング、つまりふるい分けです。大勢の方が全員歯科医院を受診できるわけではありません。多忙な時間や経済的な状況もありますし、つい歯科検診を忘れてしまうということもあると思います。

 そういう意味では、学校歯科ではある程度ひどい状態にならないために行うという意味もあります。中には虐待をチェックすることもできるのです。具体的には〇本以上むし歯が放置されている場合は虐待の可能性があるため児童相談所に通報しなければならない、と決められている自治体もあるくらいです。
 「虐待」と聞くとドキっとしてしまうかもしれませんが、実際、大きな虐待問題の早期発見という意味ではとても意味のあることなのです。歯科の場合、虫歯が多くなる状況に至る条件として、お菓子や甘いものでおとなしくさせることが考えられます。その結果、虫歯が多くなってしまうわけです。その一方、虫歯ができてきても歯医者さんに連れて行かないケースがあります。これが虐待、つまり「ネグレクト=放棄」ということです。

 子どもの場合は、自分が置かれている状況を言葉で伝えることができないことがあります。案外、「いつもより食欲がなくなっていて、気づいたら虫歯だらけだったけど本人から何も言われなかったから放置していた」、ということもあり得る話なのです。

【ちょっと気になる「要注意乳歯」】
 
 さて、学校歯科検診の話に戻りますが、その検診の結果で指摘されるような項目には「要注意乳歯」という記載があります。これはとてもあいまいな表現だと思いますが、ほかに言いようがないので仕方ないでしょう。この「要注意乳歯」というのは、具体的にどういうものか分かりにくいために不安になってしまうことがあるようです。たとえば「要注意=とてもひどい虫歯!」とイメージしてしまったり、「要注意=永久歯に影響してしまう!」といった悪い想像をしてしまうこともあるようです。

 結論としては、学校検診でよく指摘される「要注意」、これはまずは虫歯ではありません。

 要注意の歯(乳歯)というのは、生え変わりでグラグラ動いている状態の乳歯のことを示しています。これがなんで要注意なのかというと、下から生えかかっている大人の歯が存在していることがあります。その場合、歯の生え方に問題があるとみなされたり、抜けきらない状態の乳歯が邪魔になって清掃不良のため下から生えてきたばかりの大人の歯をむし歯にしてしまったり、という何らかの「よくない状況」が想定されるため、これは要注意ですよ!と指摘しているわけです。
 このように、いろいろな気を付けるべきポイントがあります。そのいろいろな注意事項を簡単にまとめると、以下のようになります。

【気を付けるべきポイント】
□ 大人の歯の生え方に注意!生え変わるのに乳歯が邪魔なんじゃないか?という想定による要注意
□ グラグラ動いている乳歯が邪魔じゃないか感により、よく噛まない、噛めないなどの生活に支障がでている
□ 大人の歯が磨けない状態に注意!乳歯が抜けなくて掃除の邪魔なんじゃないか?という想定による要注意
□ 大人の歯の形態に注意!生え変わる大人の歯が、まれに弱い歯質をもっているため確認が必要


これらのポイントを含めて
 「この歯、ぐらついてるから気を付けて!なぜなら○○だから」
と言いたいわけです。そして、この○○に入る理由が「気を付けるべきポイント」に係る内容が要約されてます。

 気を付けるべきポイントで挙げているような注意点では、歯の生え方についても含まれています。この永久歯の生え方については、別の動画でお伝えしているので参考にしてみてください。
え!?こんなところから大人の歯が? (https://youtu.be/mg8sRfCjGYQ

 実際、要注意とはいえ「生え変わり待ち」の状態にあるわけですから時間が過ぎてしまえば抜け落ちるだけの場合がほとんどです。しかしながら後から出てくる永久歯に問題が及ぶようであればちょっと心配です。
 生え方については動画を見ていただければわかりますが、歯並びの問題までイメージして対応を考えるか、その状況のみで判断するか、の2つに1つです。

 また、生えてくる永久歯に及ぶ虫歯リスクの問題や永久歯の予防処置については、シーラントのところを参考にしていただければと思います。 →子どもにシーラントは必要ですか?

【さいごに】
 学校歯科検診では、たしかに虫歯を早期発見するという目標があり、ある程度みなさんも信頼されているのかもしれません。しかし、学校歯科検診でチェックする項目はたくさんあり、細かく診察しようとするとあまりにもツールが足りないものです。道端で落とし物をしたときに夜ライトもなしに暗い中で探し物をしようとしているようなものです。
 とはいえ、そういった中であっても社会的問題の発見につながるような役割も備えている歯科検診は大切です。学校で行われる学校歯科検診も大切ですが、本質的に虫歯や歯肉炎、歯並びやそれら以外の歯科疾患等の早期発見を心がけたいと思ったら、やはり定期的に歯医者さんに通って「問題がない」という安心感を得るのが一番大切です。
 一年に一度でも、可能であれば半年に一度、理想的には3か月に一度、しっかりチェックするのが望ましいと思います。

【まとめ】
 学校検診はスクリーニング、ふるい分けの目的で行っている
 ごくまれに虐待を発見するケースがあり、重篤な社会問題の早期発見の役割もある
 要注意乳歯は、具体的な問題がいろいろ隠れているのでざっくりした表現になっている