子どもの歯の神経を抜くことについて

まず、子どもさんの前で歯の神経を抜く、神経を抜く、抜く、この言葉は使わないようにしましょう。

これは大前提となります。

子どもさんの前で「抜く」という言葉は歯医者さんのイメージとして余計な心配させてしまいます。
「痛い」、「痛くない」という言葉も同じです。
なぜ「痛くない」という言葉まで同じか、というと、

子どもからしたら「痛くない」んだ、じゃあ素直に治療しよう、なんて「体は子ども・頭脳は大人」な名探偵コ〇ンくんみたいな子どもいるわけないですね(笑)

ということで、当院では「抜く」という言葉の代わりに「取る」や「つまむ」という言葉に置き換えています。
どうぞご理解のほどよろしくお願い致します。

さて、前提となる話はそんなところにして、本題に入ります。

子どもの歯の神経を取ることは、必ずしも悪いことではありません。
神経を取ることに至った原因はさまざまあるかと思います。

例えば虫歯。
むし歯になってしまったために歯の奥深くまで虫歯菌によって感染してしまった。感染したところは削り取らなければならない(´;ω;`)

それが深すぎて深すぎて、いよいよ神経と言われる組織まで到達してしまった・・・
そういう時には神経組織を取らなければ、後々に腫れたり噛めなくなったりしてトラブルが起こるわけです。
そうならないために、神経を取る必要があります。

もちろんぶつけて神経が死んでしまう、つまり外傷によって神経を取らなければならなくなることもあります。
それも一緒です。

状況によって、神経を取らなければならないことは往々にして存在しています。
大切なことは、神経を取ったことではなく、その後に”「神経組織の代わり」となるものに人工物が入ったことを認識しているかどうか”です。

神経組織があったところは取ったら最後そのまま空洞にしておくわけには行きません。そこにカルシウム製剤などの薬的なものを入れて、人工物で補填しておく必要があります。それは余計な空間を詰め詰めして感染してしまうような空間を作らないようにしておく必要があるからです。

実はこの人工物が大人の歯が生えてくる時に邪魔になって歯の生える方向を変えてしまうトラブルが起こることが”まれに”あります。
あくまで”まれに”です。稀に!

こんなことを書いてしまうと、あ、やっぱりうちの子は神経を取ったから歯の生えてくる方向が違っちゃったんだ・・・
なんて思っている方、それは違います。

なんでかというと、ほとんどの場合の歯の生え方が思っているところと違う、または乳歯が残っているのに大人の歯が横から生えてきた、さらには乳歯が抜けたのに大人の歯がもう半年も生えてこない
なんていうのはほとんどが顎の発育の問題があるからなんです。

顎の発育の問題は、ここでは簡単に説明できるほどシンプルなことではないのでまた別に書きます。

しかし、覚えておいてほしいのは、
「全体的な歯並びの問題」は「顎の発育の問題」によるもの
「一部分だけの歯の生え方の問題」は「該当する乳歯の神経を取ったことがあるという既往歴がある前提をもって、その歯に限定した生え方に影響を受けたもの」によるものということ。

この二つをごっちゃにしてしまうと、
歯の生え方が気になる→そういえば神経とったことある→歯並びが悪いかもしれないけど神経とったからだ!→ほかの歯は並ぶだろう
という図式で妙に納得してしまうことになるんです。

ではその先に何が待ち構えているかというと・・・10歳くらいになってから「あれ?うちの子歯並び悪いんじゃない?今から矯正考えようかな?」
となります。
でも顎の発育の問題に戻りますが、顎の発育の問題を考えられるのは8歳くらいまでなんです。


そう、遅くなります。

もっと早く話を聞きたかったっていう方たくさんいるんです。

で、今回何が言いたいかと言うと、日常でよくある「歯の神経を抜くこと」
これを通して歯並びの問題と一般歯科治療による問題は別のカテゴリーの問題ということです。

つまり、
神経問題=口の中の一部分だけの問題
歯並び問題=口どころか骨格、姿勢、発育、呼吸、生活様式すべての問題

ということで、見ているフィールドがまるで違うんです。

わが子のために、きちんとした知識を身に着け、ウワサや都市伝説的なものに振り回されないようにしましょう。

*ウワサや都市伝説・・・口移しや食べ与えをしてはいけない とか。(←情報はアップデートされてます)